LOGIN俺は抵抗しても敵いそうにないため、大人しく連中に従うことにした。明らかに向こうは肉体労働者か、その筋の人間で、こちらは運動不足のアラサーだ。勝負になるわけがない。
そして、俺は通話越しの薫のことを考えた。(いきなりですまないが、頼んだぜ、薫。……やっぱり連れてこなかったのは正解だったな)
俺は二人に連れられ、この連中の詰め所に連行されている。
「おい、お前はどこの事務所なんだ?」
俺を後ろから追い詰めた方が、いきなり聞いてきた。
「え?」
俺は戸惑った。俺は芸能人じゃねえぞ。
「『えっ』じゃねえだろ、どこの探偵事務所なんだ?」
「あっ、ああ」
一瞬、俺は(その設定まだ生きてたんだ)と思ったが、この設定は俺の生命線だ。個人だと分かったらどういう手に出るかわかったもんじゃない。場合によっては薫にも危害が及ぶ。
「いや、今どきインターネットで広告もしてないようなチンケな事務所でして……槻島探偵事務所といいます」
「……で? 何人くらいいるんだ」
「……俺を含めて五人かな」
「……そのくらいならなんとかなるか……で、どこにあるんだ?」
やべえな。思った以上に武闘派だった。くそっ! とりあえず、今は続けるしかない。
「……えっ、い……嫌だなぁ。何も見てないから見逃してもらえませんか?」
「そいつは、お前のところの事務所の対応次第だ。所長は何ていう名前だ?」
「槻島蓮です」
「で? お前の名前は?」
「……え、えーと田中……」
俺が咄嗟《とっさ》に答えられないでいると、突然、男の目つきが変わった。
「ちっ! お前、俺達のこと舐めてるだろ……」
男は凄むと、唐突に腹を殴ってきた。
「うっ!」
腹に叩き込まれたパンチの衝撃に、俺は息が詰まり、視界が白く濁る。胃液が逆流する激しい痛みに、その場にうずくまるしかなかった。
「こいつのこれまでの話は全部ウソかも知らん……オイ、お前。今度嘘をついたら、こんなもんじゃ済まねえぞ」
男は俺の髪を引っ張って起き上がらせると、顔を近づけて睨みつけてきた。
「分かってんだろうな!」
俺は、しかたなく頷いた。
「いいことを教えてやる。お前が探していた男、動画配信者って言うんだっけか……あれはもうこの世にいない。あの家の爺さん、婆さんと同じ所にいるよ」
男は、そう言って歪んだ笑みを浮かべた。
男がこともなげに言った、その内容に俺は驚愕した。たかだか太陽光パネルのために、そこまでするのか? そしてそれを教えるということは、俺も殺すつもりってことか。くそっ! 親父たちの死の真相も知り得ず、こんなところで死ぬわけにいくか!
「素直に吐けば、せめてもの情だ。苦しまないように殺してやるよ」
その時だった。
まるでスイッチを切ったように、音が消えた。 あれだけ賑やかだったフクロウや虫の鳴き声が、唐突に遮断されたのだ。いや、風の音すらしない。世界から音という概念が抜け落ちたような、耳が痛くなるほどの静寂。 これは明らかに異常事態だ。「何か聞こえないか?」
俺は男に聞いてみた。
「は? 何言ってんだ。……虫一匹鳴いてねえ、静かなもんじゃねえか。……? いや、静かすぎるのか……?」
男たちも流石に気づいたようで、キョロキョロと辺りを見回し始めた。
俺も辺りを見回した。視界の端で、闇が揺らいだ気がした。 そこを見ると悪寒が走った。何もいない。いないはずなのに、空間の一部が、不自然に歪んでいる。まるで、そこだけ背景画像が欠落したような、黒い“ノイズ”のような影。『……ヴヴヴ……』
耳ではなく、脳の奥底に直接響くような、重低音の唸り声。
次の瞬間、影が弾けた。 闇の中から、黒い渦のような塊が飛び出してきた――そう認識したときには、そいつは目の前の男の首元を通り過ぎていた。 噛みついたわけではない。ただ、通過しただけに見えた。「うぐっ……何……な……んだ……」
男が首を押さえる。指の隙間から、音もなく鮮血が溢れ出した。
いや、違う。傷口から血が出ているのではない。喉そのものが、ごっそりと“消失”していた。まるで消しゴムで空間ごと削り取られたかのように、肉も骨も声帯も、断絶していた。ドサリ、と男が崩れ落ちる音だけが、静寂の中でやけに大きく響いた。
月明かりと僅かな電灯に照らされて、その黒い影が、一瞬だけ獣の形をとった。それは半透明で、男の首を抉り取ったはずなのに、その体表には返り血一つついていない。ただ、夜の闇よりも暗い、黒い渦のようなものがまとわりついているだけだ。「……これは……怨霊?」
俺は、その“犬”のような影を見てそう思った。物理法則を無視した暴力。疲労とは別次元の恐怖で足が震え、力が入らなかった。
“犬”は、倒れた男が動かなくなるのを見ると、もう一人の男の方へ、ゆらりと向き直った。「ひっ、……た、助けてくれ……」
男は誰ともなく、そう呟くと後ずさった。しかし、“犬”は一瞬で間合いを詰め、またしても男の喉元を、その漆黒の牙――あるいは虚無の空間――で薙ぎ払った。
「止せ、やめるんだ」
俺は、“犬”にそう叫んだが、無駄だった。その声が聞こえたのか、一瞬こちらを向いたが、興味を失ったように首を振り、男の喉を絶った。
俺は次は自分の番かと思って身構えたが、犬は俺を襲ってこようとはしなかった。その時、スマホから薫の声が聞こえた。
「先生!? 大丈夫ですか? 今向かっています」
俺がスマホに意識を向け、ポケットから取り出した時、犬の姿はもう消えていた。同時に、森に虫の音が戻ってきた。
今の静寂は一体なんだったんだ。しばらく呆然として待っていると、俺の車に乗った薫がやって来た。
薫は、車のライトでこの惨状を照らし、見えてしまったのだろう。暗闇も相まって青ざめた表情で、俺の顔を見て、聞いてきた。「先生、大丈夫でしたか? それにこれは一体?」
俺は(疲労と恐怖で)考えるのが面倒になってきていたが、心配げな薫の表情を見て、気を持ち直した。
「俺は大丈夫だ。ま、足がガクガクだけどな。……それとコイツラは……薫、そこのゴミ捨て場が見えるか?」
「あっ、はい。暗くてよく見えませんが、なんです?」
「不法投棄された太陽光パネルだ」
「……太陽光パネル。……なんでそんなものが?」
「その理由は、向こうにある詰め所だか、事務所だかを調べれば、なにか分かるんじゃないか?」
そう言って、俺と薫は連中の詰め所に向かった。
俺達はひとまず宿を探すことにした。既に夜の十時を回った。暗いし、聞き込みをするにしても、玄関まで出てきてくれるかも怪しい。 犬は元来夜行性なので、夜の方が遭遇確率が上がりそうではあるが、そもそもあの犬がどういった素性のものなのかわからない以上、むやみに歩いてどうなるものでもないだろう。 比較的近くのビジネスホテルの部屋に入り、シャワーを浴びた後、俺はベッドに倒れ込むようにしてすぐ寝てしまった。俺が目覚めたのは、チェックアウト時間の三十分ほど前、心配した薫が俺のスマホにかけた電話の呼び出し音で、俺は目を覚ました。「お風呂で溺れでもしたんじゃないかって、本気で心配しましたよ」「……いや悪かった。でも、思った以上に疲れてたんだな」 俺は家に戻ったら、運動を始めようと密かに誓った。「先生、今日は犬飼さんのことを近くの人に聞き込みしましょう。私、民俗学のフィールドワークで、そういうのは得意なんです」 薫が張り切っている。昨日の犬の怨霊のことを考えると、無理にでも家に帰したいところだが、爺さん婆さんから話を引き出すのは、正直苦手だ。こちらからお願いしたいというのが本音だった。「分かった。だが、無理はしないでくれ」「はい。大丈夫ですって」 薫はそう言って、ニッコリと笑顔を見せた。 俺達は、それから遅めの朝食をとった後、例の古民家近くの家で聞き込みをしていた。「すみません。犬飼さんのことで、お伺いしたいのですが……」 玄関の引き戸を半開きにして、婆さんは顔をのぞかせた。「……なんだい、あんたら?」 現れた婆さんは、俺達を値踏みするように見ながら、何かに怯えるかのように、しきりに辺りを気にしていた。「あんたらの他には誰もいないだろうね?」 俺達の他に、黒川総業の連中とか、告げ口をしそうなやつがいないか心配なのだろう。「はい、私達二人だけです」「……そうかい」 とはいえ、あからさまに迷惑そうな態度を隠そうともしなかった。「犬飼さんのところで、動画配信者
俺は、詰所に向かう傍ら、薫に起きた出来事をかいつまんで、説明していた。 月明かりに照らされる薫の顔はまだ青ざめていたが、惨状を見たショックに、気丈にも泣き言を吐かずに耐えていた。「じゃあ、動画配信者の方は殺されて、その犯人も犬の怨霊みたいなのに殺されてしまったんですね」「ああ。実体があるんだか、ないんだかよくわからんやつが、どうして喉をえぐり取れるのか、納得がいかないが……」「でも先生、『聖痕』はご存じですか? 強い信仰という“精神”が、この世の物理法則を無視して、何もないはずの“肉体”に『傷』をつけるんです。怨霊の『怨み』というエネルギーが、あの犬の形をとって、物理的な『欠損』を生じさせた。そう考えれば、つじつまが合いませんか?」 聖痕――それについては、俺も聞いたことがある。キリスト教の熱心な信者が、十字架にかけられたキリストの苦難を追体験しようと深く瞑想に入ると、キリストと同じ場所から、突然“物理的な傷”が現れ、出血する現象だ。「……あんなのは、オカルト好きの妄想かと思ってた」「酷いですよ、先生。もっと身近な例だと、胃潰瘍とか癌だって、精神的ストレスが肉体に悪影響を与える例は、たくさんあるんですから。何より、お父さんを助けてくれた時だって……、あれこそ、その最たる事例じゃないですか」「……いや、そうなんだろうが、実際あの場にいて、あの理不尽なまでの暴力を見せつけられれば、納得いかない気持ちも、少しは分かってもらえると思うんだが……。それはともかく、着いたぞ。薫はちょっと隠れてろ」 「少しだけ待ってください」 詰め所のドアの前で、薫が一度、深呼吸をした。まだ顔色は悪いままだ。「……先生、私は大丈夫です。やれます」「無理はするな」 薫は頷くと建物の陰に隠れた。それを見計らって、俺はドアを開けた。 中は、事務机にテーブルと椅子が置かれている。金属のラックには、多少のファイルと、食品類などの段ボールがあるくらいだ。奥に部屋があったので、行ってみると、仮眠室のようだった。 誰も居なかったので、
俺は抵抗しても敵いそうにないため、大人しく連中に従うことにした。明らかに向こうは肉体労働者か、その筋の人間で、こちらは運動不足のアラサーだ。勝負になるわけがない。 そして、俺は通話越しの薫のことを考えた。(いきなりですまないが、頼んだぜ、薫。……やっぱり連れてこなかったのは正解だったな) 俺は二人に連れられ、この連中の詰め所に連行されている。「おい、お前はどこの事務所なんだ?」 俺を後ろから追い詰めた方が、いきなり聞いてきた。「え?」 俺は戸惑った。俺は芸能人じゃねえぞ。「『えっ』じゃねえだろ、どこの探偵事務所なんだ?」「あっ、ああ」 一瞬、俺は(その設定まだ生きてたんだ)と思ったが、この設定は俺の生命線だ。個人だと分かったらどういう手に出るかわかったもんじゃない。場合によっては薫にも危害が及ぶ。「いや、今どきインターネットで広告もしてないようなチンケな事務所でして……槻島探偵事務所といいます」「……で? 何人くらいいるんだ」「……俺を含めて五人かな」「……そのくらいならなんとかなるか……で、どこにあるんだ?」 やべえな。思った以上に武闘派だった。くそっ! とりあえず、今は続けるしかない。「……えっ、い……嫌だなぁ。何も見てないから見逃してもらえませんか?」「そいつは、お前のところの事務所の対応次第だ。所長は何ていう名前だ?」「槻島蓮です」「で? お前の名前は?」「……え、えーと田中……」 俺が咄嗟《とっさ》に答えられないでいると、突然、男の目つきが変わった。「ちっ! お前、俺達のこと舐めてるだろ……」 男は凄むと、唐突に腹を殴ってきた。「うっ!」 腹に叩き込まれたパンチの衝撃に、俺は息が詰まり、視界が白く濁る。胃液が逆流する激しい痛みに、その場にうずくまるしかなかった。「こいつのこれまでの話は全部ウソかも知らん……オイ、お前。今度嘘をついたら、こんなもんじゃ済まね
俺達は、車に乗って三時間。目的地の古民家に近い山の麓までたどり着いた。 そもそも薫は大学で民俗学を専攻していた。フィールドワークを行う傍ら、怪談じみた話を聞くうち、実際に見てみたくなったという話を以前聞いたことがあった。 しかし、この件では例の配信者が行方不明になっており、安全とは言い難く、俺としては連れて行くことに気が進まなかったが、頑としてついていくという薫に根負けしたのだった。 それでも俺は道中に何度か、薫に家に帰るよう促したり、なぜそこまでオカルト紛いの事件を追いかけたがるのか聞いてみたりした。 しかし、返ってきた答えは「先生のお役に立ちたいんです」とか、「私、色々と準備してきましたから」といった答えではぐらかされるばかりだった。「さて、着いたぞ。……ひょっとすると、この車って、例の配信者のものか?」 俺は自分の車を止めた近くにある車のナンバープレートを見た。練馬だった。「そうかもしれません」「この車も気になるが……それより、このタイヤの跡は何だ?」 道には、軽トラックなどではない、もっと大型の車が何台も通ったような跡がくっきりと残っていた。「この山で、何か採掘でもしてるんでしょうか?」「さあな、でも向かう道は同じようだ。とにかく古民家へ行ってみよう」「ここが……例の古民家か」 トラックのタイヤの跡は、この民家の前を通って続いていた。薫は古民家やその周りをスマホで撮影していた。「あのう、どちら様ですか?」 古民家の引き戸がいつの間にか開いており、そこに男が立っていた。男は穏やかな表情を浮かべつつも、どことなく隙のない雰囲気を漂わせていた。 相手がどういう筋のものか不明なので、俺はとりあえずカマをかけてみることにした。「ああ……いえ、この付近で動画配信をやってる最中に行方不明になった者がいましてね、親御さんから探してほしいと頼まれまして……」 男は表情を変えることもなく答えた。「いえ、そういった方は見ていないですねえ。ここらには似たような民家が多いので、どこ
薫に突き出されたスマホを前に、俺は面食らっていた。「とにかく、この動画をまず見てください」「って、いきなり何だよ! 動画ぐらいURLを送ればいいだろ」「そんな事したって、先生は絶対に見ませんよね?!」 薫はそう言って口を尖らせた。俺は図星を突かれ、ぐっと言葉に詰まる。「……まあ、折角来たんだ。茶でも淹れてやる」「あ、私やります!」 そう言うと薫は、慣れた手つきでテキパキとお茶を淹れる準備を始めた。 四方儀薫は、神保町にある古書店の娘だが、昨今の書籍のデジタル化や、そもそも本を読む人口の減少により、店番をしていてもヒマらしい。「先生~、ちょっとは台所掃除しなきゃ駄目ですよ。カビだらけになっちゃいますよ、まったく!」 彼女が俺を「先生」と呼び、こうして押しかけてくるのには、半年ほど前のとある事件のことを話す必要がある。*** 俺、槻島蓮は、この自宅のアパートで古物商を営んでいる。古物商といっても、大手が扱うような古書や漫画がメインではない。俺の専門は、古いいわくつきの品――オカルトまがいの品々を仕入れ、ネットでさばくのが仕事だ。 その日は、地方へ買い取りに出かけていた。その帰り、ついでに引き取ってくれるよう頼まれた本を売ろうと、薫の父母が経営している古書店に立ち寄った。 店主と世間話を交わそうとした、その時だった。頭蓋骨の内側に直接響くような、不快な“声”が聞こえてきた。『……お前の肉……命を……喰らう……』「うっ!」 声と同時に、人が倒れる音がした。音のしたほうを見ると、店主と思われる人物が胸を押さえて倒れていた。「!……お父さん……どうしたの?」 奥の方から慌てて、娘が駆け寄って背中をさすった。 俺は“声”の主――書棚の隅で異様な気配を放つ、古びた革張りの本に駆け寄った。 それを掴んだ瞬間、焼けつくような冷気が腕を走り、思わず本を落としそうになる。
俺はいわゆる動画配信者だ。まだ登録者数は二百人程度だが、最近始めた心霊スポット巡りがニッチな層にマッチしたみたいで、ここ数日は確実に登録者数が増え続けている。「はい! 今日はこちら、『出る』という噂で有名な古民家にやって来ました!」 俺はスマホのカメラに向かって元気にアピールする。今日訪れたのは、最近になって妙な噂が立ち始めた古い家だった。俺のような動画配信者は掃いて捨てるほどいる。要はいかに早くトレンドを先取りするか、そしてそれを続けられるかにかかっている。ぶっちゃけ登録者数が増えないのに動画の編集をするなんて、むちゃくちゃ苦痛な作業だ。だが、憧れの有名配信者達だって、それを乗り越えてきたはずだ。俺はそう自分に言い聞かせ、十月初旬にしては暑い昼下がり、古民家の門をくぐった。 俺には霊感はない……と思う。しかし、その家の垣根で囲われた古びた木製の門をくぐった瞬間、空気が変わった。湿っぽく重い空気に加え、僅かだが何かが腐ったような微かな異臭が鼻をついた。心なしか日差しも弱くなった気がした。それは庭に生えている木の木陰に入ったせいではない。本能的に何かが“やばい”と感じた。肌にまとわりつく湿度の中に、鉄錆のような――血の匂いが混じっている気がしたのだ。「なんだろう……なんとも言えない雰囲気が漂っています。……小並感ですみません。本当にお化けが出そうな、そんな雰囲気です」 口では軽口を叩きながらも、俺は背筋が冷え、鳥肌が立つのを感じていた。まだ暑いってのに……。 俺は玄関の扉に手をかけ、開けてみようとした。流石に鍵がかかっているらしく、ガチャガチャと引き戸の扉を動かそうとしたが、多少揺れはするものの開かなかった。ここで蹴破ろうかとも考えたが、これはライブ配信だ。あまりやり過ぎると、視聴者が引いて離れていく恐れもある。そう考え、家の周りを一通り見てからにしようと決めた。 「……やはり、鍵がかかっていますね。とりあえず別の入口がないか見回ってみましょう」 家の裏に回ってみると、今どきの家にはまず無い、勝手口があった。 「……あっ、勝手口っていうんでしょうかね? こっちは開いているのかもしれませんね」